生理歩行について

構造医学の根幹である生理歩行についてご紹介いたします。

歩くことはいのちの貯金

生活の欧米化によって椅子に座る時間や、車や電車に乗る時間が増え、自分の足で歩くことが少なくなってきています。
歩くのはいいことと知ってはいても、ではどんな速さで、どれくらいの時間、どんな姿勢で歩けば、どんな効果があるのでしょうか。

と、その前に…

右の図は、猿まわしのサルの骨格です。
背骨のカーブが、ヒトと似たS字カーブになっているのがわかります。
猿まわしのサルは、芸を覚えるために、まず2足歩行から始めます。これを続けると、比較的表情が穏やかになり、賢くなるそうです。わずか一世代で、右図のような変化を得るわけです。
ヒトは、サルが木から降りて歩き始めたことから進化しました。両手が自由になったのはもちろんですが、二本足で歩くこと、それ自体にも大きなカギがあったことがわかります。

通常のサル
二足歩行を行うサル
二足歩行のサルの骨格図

歩行時の衣服について

歩行を行うときは、当たり前ですが動きやすい服装と運動靴をお勧めします。
転倒時の衝撃防止として手袋の着用や、都市部では排ガス対策としてマスクの着用も大切です。曇天や雨天時、夜間の歩行の際は必ず反射板を付け事故の防止に努めましょう。
歩行時の恰好は運動靴、手袋(転倒時の衝撃防止)、都市部はマスク(排ガス対策)、夜は必ず反射板を身につけましょう

歩行時のポイントは5つ!意識してみましょう

① まっすぐ前を見る

② 上体はやや前傾させる

③ 肘を曲げ、後方に引くことを意識する

④ 両手の親指を立てる

⑤ 足で一本線を挟むようにして歩く

歩行時は、前を見ること、上体をやや前傾させること、肘を曲げ後方に引くこと、両手の親指を立てること、足で一本線を挟むようにして歩くことを意識しましょう

歩行は一度に続けて40分行いましょう

出勤で20分、帰宅で20分と分けて歩くより、続けて歩く方がはるかに効果があります。
40分と聞くと「えっ、長い!」と思われるでしょうが、かなりの早歩きで歩いても、40分で約4.4km。
お家を出てから片道約2kmでどこまで行けるでしょうか?
それをぐるりと一周すれば、あっという間に40分です。

歩行の効果について

骨が作られる

歩くと骨に圧力がかかります。その圧力で骨から電子が飛び出してマイナスの電荷になります。するとまわりの物質でプラスイオンのものがくっつきます。その一つがカルシウムです。こうして骨が作られます。

骨が作られる

血液と免疫が作られる

圧力が低いと赤血球やリンパ球が作られます。マラソン選手が高地トレーニングするのは、酸素を運搬する赤血球を作るためです。一方、圧力が増えると、バクテリアを食べる顆粒球、リンパ球に指令を送る単球(マクロファージ)が作られ、いわゆる免疫が高まります。歩くことで骨髄に圧力がかかって免疫細胞が作られ、病気に強くなるのです。

血液と免疫が作られる

血液を全身に送る

足は第2の心臓と言われる通り、作られた免疫細胞を歩くことで元気に体中に送り届けます。

血液を全身に送る

認知症改善

色んなメカニズムがありますが、構造医学ではたまったエネルギーの放電が、認知力向上のひとつの原因だと考えます。

認知症改善

歩く速さによっては消化器系や泌尿器系
呼吸循環器系の改善も可能です

なんのために歩くか考えてみてください。実は、歩く速さで効果も変わってくるのです。
ゆっくり歩くと、消化器系によく、精神安定作用があります。(第一生理歩行)
ふつうの速さで歩くと、泌尿器系に効果があります。(泌尿器系歩行)
やや早歩きで、呼吸循環器系が改善します。(呼吸循環器系歩行)
早歩きだと、筋力・骨強化・関節潤滑・気力と体力が向上します。(第二生理歩行)
ただし、無理して早歩きすると、かえってよくありません。体調や体力と相談しながら調整して下さい。具体的な速さは、身長で変わりますので下表をご覧ください。

二足歩行のサルの骨格図

二足歩行のサルの骨格図

第一生理歩行
身長 1分間の距離
175cm 63.0m
165cm 58.5m
155cm 54.0m
145cm 49.5m
135cm 45.0m
125cm 40.5m
115cm 36.0m
第二生理歩行
身長 1分間の距離
175cm 110m
165cm 102m
155cm 94m
145cm 86m
135cm 78m
125cm 70m
115cm 62m

二足歩行のサルの骨格図

呼吸器循環系歩行
身長 1分間の距離
175cm 90.0m
165cm 83.5m
155cm 77.0m
145cm 70.5m
135cm 64.0m
125cm 57.5m
115cm 51.0m
泌尿器系歩行
身長 1分間の距離
175cm 80.0m
165cm 74.2m
155cm 68.4m
145cm 62.6m
135cm 56.8m
125cm 51.0m
115cm 45.2m
それだけですか?

いいえ、動物の骨格がすべて違うのは、それぞれに適した形があるからで、最初にお話ししたように、ヒトの身体は、二本足で立って歩くためにできています。
ふだんいろんな無理や負担にさらされる私たちの身体は、歩くことで本来の調子に戻っていきます。これを『生理性の回復』と言い、歩くことの真の意味はそこにあります。逆にきちんと歩く習慣がないと、少しずつ負担や無理がたまり、身体は病気に向かっていきます。
動物が長生きする上で科学的に効果が証明されたのは、現在のところ睡眠と移動(歩行)だけです。
歩行には、単なるスポーツや運動とは全く異なる、大きな意味があるのです。
無理せず楽しい歩行習慣を、ぜひ身につけてください!

日本構造医学研究所 研究より
参考文献:吉田勧持;『歩行』と『脳』(2006) , 産学社エンタプライズ