構造医学認定講師 林田一志
構造医学認定講師 林田一志
ITSUSHI HAYASHIDA 林田 一志

医学博士 / 日本構造医学研究所付属臨床センター 元部長 / 一般財団法人構医研究機構 現理事長 / 構造医学認定講師
21年前に構造医学と出会い、吉田勧持先生に師事。付属臨床センターで8年間臨床経験を積んだ後、大阪にて高槻クリニカルルームを開業。以降臨床の傍ら研究だけでなく次世代への教育も精力的に行っている。

初学者に向けて

構造医学を初めて学ぶ方に向けたこの講義は、初学者が戸惑いやすい学習の方法や無数にある解釈に触れ、多くの受講者から情報を得ることが大切だと述べています。
既に構造医学を学んでおられる方は、一度ご自身の治療や臨床者としての自分を見直すきっかけになるかと存じます。是非ご覧ください。

理解することを諦めないでほしい

構造医学を学ぶにあたり、一番に伝えたいことは「分からないからと言ってすぐに諦めない」ということです。何事もそうですが、全体像を理解し、実際に現場で運用できるまでには時間がかかります。この場におられる先生方は土曜日の診療を休んで熊本までお越しになっています。受講されておられる先生方は、学びを求める意識がとても高い方だとお見受けしています。

ですから、せっかく縁があって受講されているので、最初の方で分からないからと諦めないでください。

構造医学のとらえ方自体は特殊なわけではなく、自然科学の基礎に沿ったごく常識的な考え方です。例えば治療学においては、ヒトの内的環境と外的環境を可能な限り整えて、本来個体備わった自己修復・復元力が作動するよう導きます。この理解に、ヒトと取り巻く外的環境において、地球を含めた自然界である外的環境も同列に扱います。それを説明するための用語が多岐にわたってしまいます。例えば、医学生物学以外に物理学、数学、人類学、哲学、史学など。したがって、最初は慣れない用語に翻弄されます。さらに地球を超えて宇宙での物質生成の話まで及ぶことがあります。さすがに話が宇宙にまで及ぶと、現実の悩ましい臨床現場の話題にいつ戻れるのかと不安になります。しかし、ヒトを構成する元素(たとえばミネラルなどの重金属)の基礎的なふるまい知るためには、宇宙の物質生成の理解も必要であることが最近になって私にもようやくわかってきました。

大宇宙に育まれた小宇宙である我々の体は、学ぶほどにどこまでも奥深く不思議な世界が広がっています。この講座で広く深く納得できるまで学んでいただきたいです。

正規セミナーは診療者としてのベースを作る

私は構造医学を学びはじめて21年目になります。いま振り返ると、吉田先生から直接学べて本当によかったと思います。特に、個々の患者さんに応じて最適な治療を組み立てながら診療を展開することが出来るようになったことには、やり甲斐を感じます。

臨床の場というのは流動的です。患者さんも診療者も共に生き物で刻々と変化しています。少なくとも、診療者は自分自身の体を維持する術を身に着けなければなりません。自分自身の体が不健康で揺らいだ状態では、精度の高い治療ができないのです。自分の体を最善の状態に維持しつつ、その延長上に変化する患者さんの病状へ最善の対処をするわけです。

構造医学の講座では、「個体が存続維持する要件」を基礎として臨床者としての自分の体の保全維持の方法から学びます。自らの体の自己管理法を身につけたうえで、家族の健康の保全、そして患者さんへの問題解決へと進みます。これらを補う方法として、上記の学びの延長上に治療技法を習得してゆきます。まずは治療者としての自分自身をつくることから始まります。

人体は機械のように決められた手順通りに操作して、正しい答えが返ってくるわけではないので、一つの対処法を学んだとしても、時とともに変化する患者さんを良き方向に導くことが出来ません。

構造医学では、ヒトの成り立ちの理解から体の保全と維持、問題を乗り越えるための技法を一貫して学びます。この一貫性が、刻々と変化する体の変化に追従できる最善の処方を可能としているのです。

ひと昔前は師匠につき、師の背中をみて育てられたものです。師の肩越しから師と同じ視線上に患者さんをみさせてもらい、患者さんの苦悩にどう向き合ったかを体感を通して学べました。言葉ではとても表現できない体験を積み上げて、診療者として成長してゆくことができました。しかし、昨今ではこのような機会がもうほとんどなくなってきています。というのは、接骨院や治療院は人を育てる余裕がなく、養成学校を卒業した後に学びなおす理想的な機会が非常に少ない現状があります。本講座では、これらのことを補うことも踏まえて、講座が組まれています。皆さんは縁あってよき講座を選んでおられるので、腰を据えて学び納得できる治療者となっていただきたいです。

創始者から学べるので枝葉ではなく本筋が分かる

地球環境問題医療者会議は創始者の吉田勧持から直接構造医学を学ぶことが出来るセミナーです

【地球環境問題医療者会議】は構造医学の創始者である吉田先生に直接教わることが出来る唯一のセミナーです。(2019年3月時点)

ですので、受講している皆さんは、構造医学を学ぶという点では王道の道へと第一歩足をすでに踏み入れておられます。

構造医学の解説セミナーは各地で開催されているようですが、どうしても講師の方が経験の範囲内にとどまり、その範囲内での解釈、省略と編集が入ってしまいます。

したがって、構造医学を学ぶのであれば、創った本人から学びとることが、自らの持ち味を生かした臨床者となれる最短コースとなるでしょう。

本講座は、構造医学のとらえ方、考え方の基礎理論を学びます。次にその基礎理論を根拠とした技法を習得します。この基礎理論から技法までの一貫した学びは、患者さんの状態に応じた最適な処方の選択を可能にします。

用語一つとっても難しい。だからこそ現場で役に立つ

現代医療や伝統医療、物理工学や発生学など様々な学問を体系化したものが構造医学

なぜ吉田先生の話が難しく感じるのかというと、構造医学は医学だけではなく様々な学問を統合し、体系化されたものだからです。これを人に伝えるために、体系化した内容を濃縮した言葉を使うので、そのぶん難しくなります。構造医学の教本は、「構造医学の原理(基礎編)」「構造医学解析Ⅰ」「構造医学の臨床」のほか副読本があります。最初は何となく読めてしまいますが、構造医学の講義を受けて、教本の背景にある事柄を深く学ぶと、内容の濃さに改めて気づきます。したがって、最初は難しく感じて当然です。特に初めての先生は慣れない用語に戸惑っておられることでしょう。

難しくて理解に時間がかかる理由は前述の通りですが、構造医学は事実に基づいて筋道を立てて構築されているので、理論に裏打ちされた現象を自分で確認できます。

焦らずに、学んだことを訓練し、原則どおりに実践で検証し、納得感を丁寧に積み上げてゆくと十分身につきます。なので、まずは言葉につまずかないようにしてくださいね。

先輩や同じ受講生をお互いに頼りましょう

療具の使い方をアドバイスする受講生たち

言葉にはそのもの自体を指す他に、隠れている意味が存在していることが多々あります。同じ場で同じ講義を受けても、受け手側は一人ひとりとらえ方が違います。会場には初参加の方から20年以上継続して学ばれている方、また初めての受講でも様々な年齢層の方がおられます。各受講生のそれまでの経験や学びの蓄積、臨床現場における検証と納得感には個人差があるので、理解度も異なります。

もしわからない言葉があったときは、熟練の先生方にぜひ聞いてください。(本質編・基幹技能編合わせて)同じ学びをする受講生が毎回200名近くいますので、講義を受けるだけではなく、参加の先生どうしでも知恵や技や経験を分かち合い、皆で成長していただく機会となってほしいです。一人でできることなんて大したことはできません。一人で抱え込まずに納得できるまで互い学んでいただき、一流の診療者を目指しましょう。

すぐには分からない。何故なら「自分で考えさせる」から

前述の通り、同じ講義を受けたとしても受け手側のとらえ方は人によって違います。また、受講される先生方はさまざまな専門分野にわたっており、学んだことを活用する現場もそれぞれ違います。構造医学の本質的な学びの骨格はしっかり押さえたうえで、各々の分野で直面する問題に運用しなければなりません。一側面から見ただけのマニュアル的な理解ではすぐに居ついてしまい、構造医学を自在に扱えないことになります。ゆえに、講義で基本を学び、面前の患者さんの問題に置き換えて応用できるように自分で考え、工夫しなければなりません。

本質編では、同じ領域の内容を毎年異なった側面からお伝えすることがあります。講義を記録したDVDで復習を兼ねながら多面的に学び、自分のものとしてゆく必要があります。「石の上にも3年」という諺がありますが、基礎を少なくとも3年かけて3方向から学び、現場の事例と照らし検証してゆくと、自分の成長を確認してゆくことができます。受講しはじめて2年目で、「この話聞いたことあるな」と思えるようになり、3年目で講義と自分の経験を照らしながら、ある程度柔軟に現場で運用できるようになります。おおかたの先生は日ごろ現場におられるので、患者さんの状態と講義や実習で身に着けた内容が結びついてゆきます。時間がかかりますが、マニュアル完結型の講義と異なるのはこの点です。

自分がもつ「問い」には、講義を聞いてもすぐに答えがみつかるとは限らない。しかし先生方が現場でその場面に出会うと、自らの力で気付くように講義では工夫が凝らされています。話を聞いているその時はすべて分からなくてもいい。分からないときは、後から周辺事項を調べて自分のものとして蓄積してゆくことが大切です。そして構造医学の考えの基礎となる土台を自分の中に作りましょう。構造医学の考え方は汎用性があるため、自分の持ち味を基礎の上に載せて自在に応用ができます。考え方の基礎ができれば、生涯にわたって応用ができます。自分の持ち味を生かした納得のいく治療者となって、家族や縁ある方、患者さん、そして社会へと貢献の輪を広げていただきたいです。

療具の使い方をアドバイスする受講生たち

同じ情報でも解釈は人の数ほど存在している

ヒトという生き物は情報をそのまま全部自分の脳に取り込んで認識しているわけではありません。

ヒトが外部から得る情報は、1秒間に4000億ビットぐらいの情報が入ってきます。それを脳にある知識や経験、主義といったフィルターに通して、最初は受け入れられる分だけを認識します。認識する情報量は2000ビットなので、外部から得る情報の100万分の1のさらに半分程度しか自分の頭の中には入ってこないと言われています。これから分かるように非常に脳は頑固なんですね。

例えば初診の患者さんに何かしてくださいねって指導しても、しない方が多いですよね。でも、何度も患者さんのフィルターに指導内容の情報を通すことで、これは受け入れられる・受け入れられないという選択が発生して、やっと患者さんの行動変容が起こってくる。非常に頑固ですが、裏を返せば自分も頑固なので、そういうものなんでしょう。そう思えば指導に従ってくださらないことに腹が立つこともありませんね。

脳のフィルターは人によって受け入れ度合が変わります。既にある程度の言葉の関係性が出来ている人はすんなり入ってくるし、下地がない人は一つひとつの言葉に引っかかってなかなか難しいことでしょう。その後入ってきた言葉の概念を知り、関係性を構築して理解するので、フィルターを通って獲得した情報と理解する結果は個々別別です。だから事実が一つでも解釈は人間の数ほど無数にあるんですね。

感覚システムを通して受け取った情報は、知識・経験・主義・価値観のフィルターを通り無意識に編集した後理解される

言葉から意味を抽出し、理解するまでには流れがある

初めて学ぶ方は、この講義もそうですが、情報が言葉として入ってきています。それに対してこれは分かる・分からないという選択をされたと思います。そして新しく入ってきた言葉に、これはどういう言葉なんだろうかと、その言葉に囚われたり解放されたりをしばらく繰り返す時期が来ます。

STEP01

言葉の意味に囚われたり、解放されたりを繰り返して言葉(知識)を獲得します。

STEP02

言葉の概念を理解すると、既に蓄積している言葉(知識)との関係性を見出しはじめます。獲得した言葉を使って他の先生方と経験してきた症例の議論を交わしたり、アドバイスをもらったりしながら自分を高めていくことが出来ます。

議論やアドバイスの中で感じた違和感や異なる捉え方を討論しながら高めていける場として、日本構造医学会の学術会議などが挙げられます。臨床者としてだけではなく、他者の物の見方を学ぶ機会としてもお勧めです。

STEP03

獲得した言葉の関係性と診療者として蓄積した知見・経験がつながりを持ちはじめ、臨床の場で活用することが出来ます。すると成果が生まれさらに面白さも感じられます。

言葉の運用が出来たことにより、自分の理解したことを周りに共有したいという欲求も生まれます。

分かりやすい講座のみを追い求めない

私もこうやって皆さんの前でお話ししていますけれど、やはり吉田先生の構造医学の中から私のフィルターに入った、私なりの理解の結果をお伝えしているんですね。

外部にはいくらでも分かりやすい講義があります。構造医学の勉強会も多数様々あって、分かりやすい話を聞く機会はたくさんあることでしょう。一見いいことのように思えますが、先ほどの脳のフィルターの話を踏まえると、分かりやすい話とは講師のその方なりに理解した情報を、さらに簡単に編集している情報ということになります。講師のフィルターというのはその方の価値観や主義、経験で出来ているので、最初は分かりやすく、専門用語の理解が出来たとしても、聴講者のフィルターは講師とは異なることによって、理解にずれが生じてきます。

だから簡単な狭い領域の話を聞いて、その場では理解できたとしてもその次のステップで噛み合わないことや、そもそも情報を得ている聴講者のフィルターには合わないことが多々あります。

この場所にはいろんな先生方がおられるので、多角的に情報を得られることと思います。その中で自分の良さを引き出さなければいけないんですね。だからこの場で学ぶことに意義があるんです。

刻々とした世の動きに対応するには、思考力と大きなバックボーンが大事

基礎がしっかり築けると、自分の思考や持ち味をこのバックボーンの広い講義の中へマッチング出来て、自分なりの理解が出来るようになりますね。しかしあくまで自分なりの理解なので間違っている場合もあります。その時は再度講座を受講していただいて、理解と修正・更新をしていただいて上位の本質に近づいていくことが大事です。これを繰り返して自分でトレーニングしていかないと、世の中が変わるように患者さんも変わっていきますからね。基本的には構造医学のベースは不変ですが、変わっていくものには対応していかないと上手く運用が出来ないんですね。それに応じた更新ももちろん必要なので、私ら内弟子の中でも更新し続けている人はいます。前述の通り満足している人もいて、人それぞれでいいんですが、結局は求めるものの違いなんですね。どこまで求めるかによってその人がどれだけ構造医学への理解を深めていくかの違いだと思うんです。

でも深く求めて学習すると、自分が現場で学んだことの裏がどんどん取れて、自分で治療を生み出すことも出来ますし、市販の健康器具ですら自分の治療の延長線上に利用することも可能です。所感ですが自分で治療を展開出来るようになると非常に面白いです。構造医学の原理や原則を理解しているからこそ出来するとることですね。そうすると他の先生方にいちいち教えてもらわなくても自分で治療を組みなおして、患者さんに対して最善の処方が出来るようになるわけです。まずはそこまで是非なっていただきたいと思います。

特別講義

講義はこの後、継続して構造医学を学んでいる先生方に向けた内容となります。
臨床者として構造医学から学びえたことや、患者さんとの付き合い方、経営の話などぜひご覧ください。